喫煙・受動喫煙の害について知ろう・伝えよう
以前から、喫煙は日本人の死亡原因の最大のリスクであることが報告されています。
国際研究チームの報告によれば、わが国の喫煙による死亡者数は2019年には212,000人にものぼりました(図)1)。この中には受動喫煙による死亡者数 16,800人も含まれ、この1年間の死亡者数は、緊急事態宣言時の新型コロナウイルス感染症による1年半の累計死亡者数17,000人を超える数となっています。このように、受動喫煙も深刻な健康被害をもたらします。
国際研究チームの報告によれば、わが国の喫煙による死亡者数は2019年には212,000人にものぼりました(図)1)。この中には受動喫煙による死亡者数 16,800人も含まれ、この1年間の死亡者数は、緊急事態宣言時の新型コロナウイルス感染症による1年半の累計死亡者数17,000人を超える数となっています。このように、受動喫煙も深刻な健康被害をもたらします。
GBD 2019 Risk Factors Collaborators. 2020; Lancet. 396: 1223-1249より作成.
数値は、100 人単位で四捨五入している。
- GBD 2019 Tobacco Collaborators. Lancet. 2020; 396: 1223-1249.
喫煙はさまざまな病気の原因となっています
喫煙による煙には4、000種類以上の化学物質が含まれ、有害物質約250種類の中には少なくとも約70種類の発がん性物質や多数のフリーラジカルなどがあります。
これらにより喫煙が、がん、循環器疾患、呼吸器疾患、消化器疾患、その他のさまざまな健康障害の原因になっていることが、国内外の多くの疫学的および実験的研究から示されています。
これらにより喫煙が、がん、循環器疾患、呼吸器疾患、消化器疾患、その他のさまざまな健康障害の原因になっていることが、国内外の多くの疫学的および実験的研究から示されています。
※示唆するデータがある
参考文献
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紙巻たばこと新型たばこ、両方やめてこそ禁煙!
新型たばこも有害です
日本では、アイコス( IQOS)やグロー(glo)、プルーム・テック( Ploom TECH )といった加熱式たばこ(新型たばこ)が急速に普及しています1図)。
多くの人は、加熱式たばこに替えると「病気が減る」「ほとんど病気にならない」と誤解していますが、健康リスクは紙巻たばこよりも低いとはいえません。加熱式たばこから発生するエアロゾルは単なる水蒸気ではなく、紙巻たばことほぼ同等のニコチンを含みます。また、一部の発がん性物質は少ないものの、さまざまな化学物質が含まれ、タールの総量は減ってはいません2、 3)。米国の専門家たちも「紙巻たばこから加熱式たばこ(IQOS)に切り替えても、たばこで病気になるリスクを減らせない」と述べています4)。
多くの人は、加熱式たばこに替えると「病気が減る」「ほとんど病気にならない」と誤解していますが、健康リスクは紙巻たばこよりも低いとはいえません。加熱式たばこから発生するエアロゾルは単なる水蒸気ではなく、紙巻たばことほぼ同等のニコチンを含みます。また、一部の発がん性物質は少ないものの、さまざまな化学物質が含まれ、タールの総量は減ってはいません2、 3)。米国の専門家たちも「紙巻たばこから加熱式たばこ(IQOS)に切り替えても、たばこで病気になるリスクを減らせない」と述べています4)。
国際がん研究機関(IARC)は、科学的根拠に基づき「たばこの煙」自体を有害物質(発がん性物質)だと判定しています。防止すべき対象は、加熱式たばこなどの新型たばこも含めたすべての「たばこの煙」です。健康を守るために、すべてのたばこをやめてほしいと願っています。
最新の研究からは、加熱式たばこを吸っていると禁煙しにくくなり、紙巻たばこを再開しやすいことがわかっています5、 6)。紙巻たばこをやめようとして加熱式たばこを吸うようになると、むしろ禁煙をしにくくなる可能性がありますので、ご注意ください。
最新の研究からは、加熱式たばこを吸っていると禁煙しにくくなり、紙巻たばこを再開しやすいことがわかっています5、 6)。紙巻たばこをやめようとして加熱式たばこを吸うようになると、むしろ禁煙をしにくくなる可能性がありますので、ご注意ください。
- Tabuchi T, et al . Tob Control . 2018; 27: e25-e33.
- Bekki K, et al. J UOEH . 2017; 39: 201-207.
- Simonavicius E, et al . TobControl . 2019; 28: 582-594.
- FDA のTobacco Products Scientific Advisory Committee( TPSAC)の議事録https://www.fda.gov/downloads/AdvisoryCommittees/CommitteesMeetingMaterials/TobaccoProductsScientific
AdvisoryCommittee/UCM599236.pdf WebCite®によりアーカイブした(http://www.webcitation.org/75PjenxjQ) - Matsuyama Y, Tabuchi T.Tob Control . 2021. doi:10.1136/tobaccocontrol-2020-056168.
- Kanai M, et al . Thorax . 2021; 76: 615-617.
喫煙は新型コロナウイルス感染症にも悪影響を与えています
これまでの研究から、喫煙者は新型コロナウイルス感染症( COVID -19)にかかりやすく、またかかった場合に重症化しやすいことがわかっています。喫煙が、ウイルスの細胞侵入と関連する体内の蛋白質(ACE2受容体)を増加させるとされ1)、死亡するリスクも非喫煙者の1.5 倍程度になることも報告されています1)。
年齢や基礎疾患(糖尿病、高血圧など)という因子と比べても、重症化の最大のリスクと考えられています2)。世界保健機関(WHO)はCOVID-19対策として「禁煙すること」を強く推奨する声明を出しています3)。また、国内の「新型コロナウイルス感染症(COVI D-19)診療の手引き」でも重症化のリスク因子として喫煙が挙げられており、喫煙者には禁煙が重要と記載されています4)。
ウイルスの付着した手で口元に触れることは感染のリスクになります。たばこを吸うと何度も口元に汚染された可能性のある手を近づけることになるため、感染リスクを高めることになります。また、喫煙室では狭い空間でマスクを外した人が密集する状況がしばしば起こり、実際に喫煙室での感染が疑われる事例も報道されています。たばこを吸う方はぜひこの機会に禁煙しましょう。
年齢や基礎疾患(糖尿病、高血圧など)という因子と比べても、重症化の最大のリスクと考えられています2)。世界保健機関(WHO)はCOVID-19対策として「禁煙すること」を強く推奨する声明を出しています3)。また、国内の「新型コロナウイルス感染症(COVI D-19)診療の手引き」でも重症化のリスク因子として喫煙が挙げられており、喫煙者には禁煙が重要と記載されています4)。
ウイルスの付着した手で口元に触れることは感染のリスクになります。たばこを吸うと何度も口元に汚染された可能性のある手を近づけることになるため、感染リスクを高めることになります。また、喫煙室では狭い空間でマスクを外した人が密集する状況がしばしば起こり、実際に喫煙室での感染が疑われる事例も報道されています。たばこを吸う方はぜひこの機会に禁煙しましょう。
- Zhang H, et al. Eur J Integr Med . 2021; 43: 101313.
- Liu W, et al. Chin Med J ( Engl ). 2020; 133: 1032-1038.
- World Health Organization. WHO Director-General's opening remarks at the media briefing on COVID-19( 2020年3月20日)
https://www.who.int/dg/speeches/detail/who-director-general-s-opening-remarks-at-the-media-briefing-on-covid-19---20-march-2020 - 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き 第5.3 版. https://www.mhlw.go.jp/content/000829136.pdf
受動喫煙は吸わない人の健康にもおおきな悪影響を与えます
「受動喫煙」も喫煙が健康に及ぼす影響として重大なものです。喫煙による煙に含まれるさまざまな有害物質は、喫煙者が肺に直接吸い込む主流煙よりも、吸っていないときに立ち昇る副流煙により多く含まれ、副流煙と呼出煙を喫煙者の周りにいる人が吸い込むことにより受動喫煙が起こります。
参考文献
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受動喫煙防止は法律になりました
屋内も敷地内も禁煙です
「受動喫煙」を防ぐことは、単に喫煙者個人の問題ではなく、社会や行政も関わる大きな課題であり、そのための施策が求められます。世界の多くの国々では、たばこ規制枠組条約(FCTC)の第2回締約国会議で提示された「受動喫煙防止のためのガイドライン」に沿って建物内を完全禁煙とする受動喫煙防止法が成立し、受動喫煙のない社会が実現しつつあります。
屋内が全面禁煙化された国では、心筋梗塞や脳卒中、喘息の入院が減るという論文が多数発表されています。しかも、禁煙化の範囲が一般職場だけでなく、レストラン、居酒屋・バーを含むほど、病気の減少度合いは大きくなります(図)。
わが国では、約480万人の人たちがレストラン等のサービス産業で働いています。このようなサービス産業で働く人のためにも、屋内を全面禁煙にする法的規制が必要です。2020 年4 月に「改正健康増進法」が施行され、「望まない受動喫煙」をなくすことが国民の義務となりました。多数の人が利用する施設の区分に応じ屋内や敷地内を禁煙にすることが、法律で定められたのです。第一種施設(病院・学校・行政機関)は敷地内禁煙、第二種施設(一般企業、飲食店等)は原則屋内禁煙です。
屋内が全面禁煙化された国では、心筋梗塞や脳卒中、喘息の入院が減るという論文が多数発表されています。しかも、禁煙化の範囲が一般職場だけでなく、レストラン、居酒屋・バーを含むほど、病気の減少度合いは大きくなります(図)。
わが国では、約480万人の人たちがレストラン等のサービス産業で働いています。このようなサービス産業で働く人のためにも、屋内を全面禁煙にする法的規制が必要です。2020 年4 月に「改正健康増進法」が施行され、「望まない受動喫煙」をなくすことが国民の義務となりました。多数の人が利用する施設の区分に応じ屋内や敷地内を禁煙にすることが、法律で定められたのです。第一種施設(病院・学校・行政機関)は敷地内禁煙、第二種施設(一般企業、飲食店等)は原則屋内禁煙です。
たばこの規制に関する世界保健機関枠組条約(FCTC)とは? 世界保健機関(WHO)が、喫煙が健康・社会・環境および経済に及ぼす悪影響から現在および将来の世代を守ることを目的として策定し、2005 年2月27日に発効された条約です。日本は19 番目の国として2004 年にこの条約に批准しましたが、2022 年5月時点の締約国はすでに182ヵ国にも上ります。2年に一度開催される締約国会議では、規定実施ための指針(ガイドライン)を提案することになっており、近年の会議では加熱式たばこについても議論されました。 |
Tan CE, et al Circulation 2012; 126: 2177-2183より一部改変.
喫煙場所では吸わない人も高い濃度のPM2.5に曝されます
たばこの燃焼によって発生する煙の直径は2.5μm以下であり、大気汚染で問題となる微小粒子状物質( PM2.5)です。2009 年、環境省は「人の健康を保護するうえで維持することが望ましい基準」を「1年平均値が15μg/m3以下、かつ1日平均値が35μg/m3 以下」としました。排出規制が進んだわが国では基準値を超えることは数えるほどしかありませんが、屋内で喫煙するとPM2.5 濃度はその基準を大幅に超えます。
図1 懇親会で喫煙した場合の受動喫煙
平成21年度職場における受動喫煙対策に係る調査研究委員会報告書
図1に示す懇親会で15名のうち6名が喫煙した場合の会場内のPM2.5の濃度(緑色のライン)から、懇親会に参加した非喫煙者は大気環境基準( 1日平均値:紫色のライン)の数倍に達する高い濃度のPM2.5に曝露されていることがわかります1)。この時に働いていた従業員の胸元のセンサーで測定した結果(赤色のライン)では、会場内に立ち入るたびに、会場内の非喫煙者と同様の被害を受けていたことになります1)。国立がん研究センターは、2016年、職場や家庭でのこのような受動喫煙に曝露されることで毎年15、000人の非喫煙者が亡くなっていることを報告しています2)。
一方、屋外においても、喫煙コーナーの風下に置いた4 台の粉じん計で測定した結果、発生したたばこの煙に含まれるPM2.5は風下25mでも検出されました(図2:赤色のライン)3)。
一方、屋外においても、喫煙コーナーの風下に置いた4 台の粉じん計で測定した結果、発生したたばこの煙に含まれるPM2.5は風下25mでも検出されました(図2:赤色のライン)3)。
図2 屋外の喫煙コーナーの風下の受動喫煙
Yamato H, et al . Kobe J Med Sci . 2013; 59: E93-E105.
- 平成21 年度職場における受動喫煙対策に係る調査研究委員会報告書.
https://www.jaish.gr.jp/user/anzen/sho/shiryo/pdf/jyudoukitsuen_doc_h21_all.pdf - 厚生労働科学研究費補助金 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究事業.
「たばこ対策の健康影響および経済影響の包括的評価に関する研究(研究代表者 片野田耕太)」. 平成27年度報告書. - Yamato H, et al. Kobe J Med Sci . 2013; 59: E93-E105.